☆新着☆『あの人も渋高だったー』に太陽誘電株式会社取締役会長 登坂正一さん

『あの人も渋高だったー』No.14 太陽誘電株式会社取締役会長 登坂正一さん(昭和49年卒)

自動車やスマートフォンに使われる電子部品などの開発・製造・販売で世界的に事業を展開している太陽誘電株式会社の取締役会長、登坂正一さん(昭和49年卒)にお話をうかがいました。

  • 渋川での思い出

 幼少期は、暇さえあれば釣りをしたり、畑のさつまいもをこっそり拝借して焼き芋にしたり、木に登ってびわの実を食べて下に捨てたりなど、本当によく動き回ってよく怒られていました。当時は、「下駄屋が乾燥させている桐の廃材をまとめる」手伝いをすると、1束1円もらえた時代。仲間と一緒に大きな磁石を道に転がすと、釘がたくさんついてきて、それを売ったお金を小遣いとして握りしめてよく駄菓子屋に通ったものです。
 中学では、伊香保のスケートリンクでスケートをすることが楽しみ、高校時代は、スキー板を担いで満員電車に1時間ほど揺られてスキーに出かけました。ジュークボックスで音楽を聴いたことも今では懐かしい思い出です。

  • 渋川高校時代の思い出

 渋川高校時代は、とても印象的な先生に出会いました。数学の教師で、後に渋川高校の校長も務められた荒井英一先生は、絵が上手で二科会に入っていて、よく描いた絵を見せてくれました。それがとても新鮮でしたね。地学の先生が「近々東京に震災が起きる」と言ったことが、大学を都内へ進学しなかった一番の決め手ですね。でも、名古屋も南海トラフのエリアだと知ったのは大学進学後でした。ちょっと驚きましたね。
 当時は浪人が当たり前だったので、現役で大学に行こうと思っていたのは一部の生徒のみ。生徒の半分は地元渋川の出身で、小学校・中学校・高校と顔ぶれはほとんど変わらなかったです。文化祭で渋川女子高校と交流があることが楽しみでしたね。
 私は、当時から本をよく読んでいて、特に文芸書が好きでした。大学では哲学を学びたいとも思っていました。哲学と数学には同じようなイメージを持っています。
 予備校時代に、名古屋出身の友人と出逢ったことがきっかけで、大学は名古屋へ行くことになりました。40人のクラスのうち半分は落第生で、自分が卒業できたのは、周りが勉強しなかったからですね。当時の授業料は年間12,000円、家賃6,000円のアパートに住み、炬燵で暖をとる。夕飯は決まって毎日360円のきしめん定食で過ごし、授業料の仕送りを使い切って怒られたこともありました。

 昨年、i-Proゼミの講師として約50年ぶりに渋川高校を訪れましたが、敷地がこんなに広かったかなと思いました。ピンク色の校門が斬新でとても良いですよね。

  • 社会人生活での出来事

 大学4年間は遊んでいいが、卒業後は群馬に戻ってこいと父と約束していたので、地元群馬にある太陽誘電に入社しました。
 当時は生意気だったと思います。製品の素材がダメだと先輩に物申して、素材を変えて製造した製品が後の会社の成長に大きくつながるという経験をしました。しかし、10年後にやはりその素材はダメだったと自己の誤りをきっぱり認めたことで、その後の会社員生活の転機となりました。
 直近10年間で思い出深いことは、積層メタル系パワーインダクターの開発です。
 私は面白いことを結びつけることが得意だと思っています。チャンスは誰にでも平等に訪れるけど、それを掴めるかは自分の準備次第。チャンスを見つけるためには、面白いと思って取り組んでいるかどうかが大事だと思います。

  • 今後やりたいこと

 今後やりたいことはいろいろあるんですが、何か新しい趣味を始めたいですね。最近気になっているのは彫刻です。
 学生時代に美術でほめられたのは、抽象画や版画のみだったんですよ。無心になって何かをやることが好きで、よく草むしりをしながら考えを整理したり、何かをひらめいたりすることがありました。だから、彫刻もきっと楽しめるんじゃないかと思っています。
 それから、趣味である美術館巡りも続けていきたいです。次は関西に行く予定があります。

在校生へのメッセージ

 人生って、面白くないとやってられないですよね。どんなことにも面白さがあって、「面白くないと続けられないし、やっていけない」って思っています。だから、面白さを原動力にして、ワクワクをどんどん広げていくことが大切なんです。
 若いうちに、この面白さをどれだけ広げられるかが本当に大事になってきます。

フランスの学者ルイ・パスツールが「Chance favors the prepared mind/チャンスは準備された心にのみ降り立つ」という言葉を残しています。この言葉にはすごく共感できます。変化は誰にでも平等に起きているけど、その変化に気づいているか、感じているかは人それぞれです。「チャレンジしてみよう」と思える人には、チャンスが舞い込んでくる可能性が高まります。それを「面白い」と感じてチャンスに変えられるのは、準備ができている人だけ、気付くか気付かないか、やるかやらないか、その答えはたぶん自分の中で決まっていると思いますよ。

チャンスや機会が飛び込んできた時には、一歩上を目指して挑戦してみてください。時には運を味方につけて、失敗を恐れずに挑戦し、失敗から学んで前進する、そんなチャレンジ精神を持った人になってほしいと思います。

【略 歴】

1955年 8月  渋川生まれ 1974年 3月  渋川高等学校 卒業
1979年 3月  名古屋工業大学 卒業 1979年 3月  太陽誘電株式会社 入社
2006年 6月  同上 取締役上席執行役員
2007年 4月  同上 専務取締役上席執行役員
2010年 7月  同上 取締役専務執行役員
2012年 7月  同上 取締役常務執行役員
2015年 4月  同上 取締役専務執行役員
2015年11月 同上 代表取締役社長
2023年 6月  同上 取締役会長(現)